当院では、腫瘍科診療を特徴の一つとしています。
近年、動物たちの飼育環境が以前より良くなり、また獣医療の進歩により動物たちの寿命も伸びてきています。それに伴い、動物の〝がん〟の発生率は年々増加しており、ワンちゃんの47%(約半数)、ネコちゃんの32%(約1/3)が〝がん〟により亡くなっているといわれています。
多くの動物たちの〝がん〟を克服できるように努めることで、飼い主様、動物たちがより良い生活を送れると考えております。
がん治療は、リスクや費用などをご家族と十分相談し、治療方針を明確にするところから始まります。
治療方針に沿って、外科療法、化学療法、放射線療法などの治療方法から最適なものをご提案させていただきます。また、がんの克服を目指すだけでなく、たとえ完治が望めないケースでもできる限り痛みや苦しみを少なくするような治療(ターミナルケア)を行うことで、動物とそのご家族の生活の質(QOL)の向上に努めてまいります。
主な腫瘍の種類と治療例
リンパ腫
リンパ腫とは、リンパ球という体の中の免疫細胞が腫瘍化したものです。
リンパ腫は全身性の疾患であり、主に抗がん剤で治療します。完治は困難ですが、抗がん剤に非常によく反応してくれることが分かっており、犬の場合約80%、 猫の場合約60%の症例で効果があり、生存期間の延長が期待できます。
ただし、同じリンパ腫でも、皮膚型、消化器型、多中心型など、多くの種類があり、それぞれによって治療法や予後は変わってきます。
リンパ腫や抗がん剤について丁寧に説明させていただいた上で、最適な治療法をご提案致します。
肥満細胞腫
肥満細胞腫とは、肥満細胞というアレルギーや炎症などに関与する細胞が腫瘍化したものです。
肥満細胞腫は皮膚がんの中では最も多いものです。その他、皮膚の下や筋肉、内臓などにできることもあります。
同じ肥満細胞腫でも、手術のみで完治するものから、急激に進行する悪性度の高いものまであり、腫瘍の悪性度により治療法もさまざまです。
外科手術、放射線療法、内科療法の中から最も適切なものを組み合わせます。
骨肉腫
骨肉腫は犬に多くみられる骨のがんです。治療は主に外科手術ですが、90%以上で初期の段階で目に見えない転移が始まっているため、生存期間を改善するには全身的な抗がん剤治療が必要となることもあります。
また、非常に強い痛みを伴うため、疼痛緩和が非常に重要となります。痛みの緩和には手術が効果的ですが、手術が不可能な場合や希望されない場合は、数種類の鎮痛剤を組み合わせ、できる限り痛みや苦しみを少なくする治療をご提案致します。
学術業績
- 犬の悪性黒色腫細胞に対するボルテゾミブの増殖抑制効果に関する研究
(第154回日本獣医学会学術集会)